Mechanism of nucleophagy degrading entire nucleus in Aspergillus oryzae

オートファジーは栄養飢餓状態になった細胞が自身の持つ細胞成分を液胞に運んで分解し、栄養源として再利用する現象で、真核細胞が持つ一種の生存戦略です。我々は麹菌においてオートファジーが気中菌糸の形成という、細胞の分化に必須であることを見出しました(上図)。また、飢餓に陥った麹菌では核が丸ごと分解される「ヌクレオファジー」が起こることを見出しました(下図)。酵母のように核を一つしか持たない細胞ではどんなに飢餓になっても核全体を分解することは決してありませんが、麹菌は細胞内に核を複数持つ多核であるため、核を丸ごと分解しても残った核で生存を維持することができると考えられます。ではなぜ単核の細胞と多核の細胞では核の分解においてこのような違いが生じるのでしょうか?単核の細胞では核の分解を回避する仕組みがあるのでしょうか?あるいは多核の細胞では核を積極的に分解する仕組みがあるのでしょうか?我々はこれらの疑問に答え、多核の麹菌において核が丸ごと分解されるメカニズムを解明したいと考えています。