Developing microbial technologies for utilizing plant biomass

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近年、地球温暖化や化石燃料枯渇などの問題から、バイオエタノールが新たな燃料として期待されています。この理由として、バイオエタノールが生物起源の有機物(糖、デンプン、セルロース等)から生成されるエタノールであり、これらのバイオマスが成長の段階で大気中の二酸化炭素を吸収するため燃焼させても大気中の二酸化炭素濃度を上昇させないと考えられていることや、再生可能なエネルギーであることなどが挙げられます。

 現在行われているバイオエタノール生産では、その原料として主にトウモロコシやサトウキビなどのでんぷん系、糖質系原料が使用されています。これらは糖化が容易であるといった利点がありますが、食料との競合を引き起こすといった重大な問題も内包しています。そこで注目されるのが、食料と競合せず、また資源として地球に豊富に存在する木質バイオマスを原料としたバイオエタノール生産です(図1)。

 木質バイオマスはセルロース、ヘミセルロース、リグニンから成り、それぞれが複雑に絡み合った構造をしているため、分解が困難です。バイオエタノールの生産の過程では、まず木質バイオマスからリグニンを取り除き、次いでヘミセルロース、セルロースを分解してグルコース等の糖を回収し、最後に酵母が発酵によって糖をエタノールへと変換します。しかし、糖を回収するまでの工程が非常に困難であるため、いまだ木質バイオマスからのバイオエタノール生産の工業化は達成されていません。

 シロアリはこの分解困難な木質バイオマスを高効率(75~99%)で分解できることから近年注目されています。シロアリは木材分解システムの違いにより高等シロアリと下等シロアリに分けられます(図2)。このうち下等シロアリは自らの作り出す分解酵素による分解と、腸内に共生する微生物が作り出す分解酵素による分解という二重の分解システムによって木材を分解します。下等シロアリの腸は前腸、中腸、後腸から成り、肥大した後腸に原生生物が共生し、セルロースやヘミセルロースの分解に寄与しています。一方、高等シロアリは主として自らの作り出す分解酵素によって木材を分解すると考えられてきましたが、近年のメタゲノム解析から、後腸に生息するバクテリアが多種多様なセルラーゼ類を持つことがわかってきました。

 当研究室では、理化学研究所、農業・食品産業技術総合研究機構、琉球大のグループとの共同研究により、シロアリおよび腸内の原生生物・細菌群に由来するバイオマス分解酵素(セルラーゼ、ヘミセルラーゼなど)を、高いタンパク質分泌能を持つ麹菌や酵母で大量生産し、それらを用いて植物バイオマスからグルコースやエタノールを生産する新しい技術を開発する試みに取り組んでいます。これまでに様々な酵素の取得と生産に成功しており、いくつかの酵素についてはそれらが他の酵素にはない優れた性質を持つことを明らかにしています(図3)。

 将来的には、取得した酵素の中からバイオマス分解に適した性質を持つものを選抜し、その生化学的性質とその構造基盤を解明するとともに、シロアリの持つバイオマス分解能力を模倣したシステムを構築したり、それを付与した「シロアリ麹菌(?)」の育種にもつなげてゆきたいと考えています(図4)。