Analysis on the mechanism of plant cell wall-degrading enzyme production

現在、米国やブラジルを中心にトウモロコシやサトウキビなどからバイオエタノールが生産されています。しかし、それら可食性の作物を燃料生産に利用することは食糧としての利用との競合を生み、食糧価格を高騰させる要因となり得ます。この問題の解決には食糧と競合しないセルロース系バイオマスからのエタノール生産、いわゆる第二世代バイオエタノール生産のための技術の確立が不可欠です。現在セルロース系バイオマスの分解・糖化には糸状菌由来の酵素が用いられていますが、大量の酵素が必要なためその生産に高いコストがかるという問題点を抱えています。糸状菌が植物バイオマス分解酵素を生産する仕組みを理解し、それを改変して酵素の生産性を高めることができれば、こうした問題を解決することができると期待されます。

我々は、糸状菌が作るグルクロン酸エステラーゼ(Glucuronoyl esterase;GE)と呼ばれる酵素に着目しています。この酵素は植物細胞壁のキシランとリグニンの間の結合を切断しますが、それによって細胞壁の構造を緩め、他の植物バイオマス分解酵素が働きやすくする機能が知られています。我々はこの酵素をアカパンカビにおいて過剰発現させると、様々な植物バイオマス分解酵素の発現が上昇することを見出しました。このことは、GEの働きによって植物バイオマス分解酵素の発現を誘導する何らかの物質が生産されたことを示唆します。こうした物質を利用できれば、アカパンカビに効率よく植物バイオマス分解酵素を生産させることができるのではないかと考え、研究を進めています。